YouTubeの広告システムとかについての垂れ流し

YouTubeには広告が溢れてる

YouTubeで収益化を行う人たちは、殆どの場合は広告掲載費から金を発生させます。

PC、スマートフォン、テレビ、コンシューマーハードなど、様々な方法でYouTubeを見ることができますが、動画が始まる前や再生途中に広告を見たことがある人がほとんどだと思います。そして、そのほとんどの人が広告を「うざい」と感じるでしょう。

 

そう、もはや日常のものとなっていますが、広告は本来「邪魔」なものです。貴重なスマートフォンの画面を占領し、読みたいページにたどり着くまで何回もスクロールさせられたり。広告をスキップするボタンを探さなければならなかったり。ツイッターで全く興味のないスマートフォンゲームの広告が表示されたり。見たい動画が始まる前、15秒も広告を見せられたり。誰しもこのような経験があるはずです。

おそらく、広告を見ることを楽しむ人はこの世で少数派でしょう。私の頭がおかしくなければ、スクロールするたびに上から降りてくるタイプの広告を好む人はこの世に1人もいないと思います。

ではなぜインターネットには広告が溢れているのでしょうか、という話をしたいんですが、とてもじゃないが書ききれないので、今回はYouTubeに限って話をします。海外YouTuberの字幕を付ける仕事をしてきた(まだしてるけど)からこそ感じる、YouTube広告の「最悪な部分」とか、以外と知られていないことについて書けたらなと思います。なぜ、YouTubeには広告が溢れているのか。なぜ私達は好きな動画の途中で何回も「スキップ」ボタンを押さなければならないのでしょう?

YouTubeという、インターネットという「鉱山」

YouTubeは、1ヶ月に世界で約20億人が利用するサービスです。去年公表されたデータによると、国内での利用率は72%。20代以下では驚異の利用率90%超えを叩き出しています。テレビを見る人は日本全体でおよそ80%ですが、20代までに限定すると60%程度まで低下しています。*1

つまり、"若者"にとってのメインストリームはもはやテレビではなくなっているのです(さらに言うなら、テレビを視聴しながらインターネットを利用する人の率はゴールデンタイムで約24%とされていますから、テレビを見ていてもインターネットを利用している人はかなりの数いると思います。もはやそれは見ていると言えるのか?)。そこに広告を流すのは、前世紀からCMを開発してきた企業たちにとっては当然のことなのです。テレビCMとYouTube広告に、本質的な違いはあまりありません。

 少しテレビCMの話をしましょう。テレビCMには「スポットCM」と「タイムCM」という2つの制度があります。「スポットCM」は、特定の番組につくわけではなく、「この時間あたりに何回流してほしい」が基本です。放送局、視聴率と時間帯によって大きく価格が変動します。一方の「タイムCM」は、特定の番組につき、大きく名前を出します。もともと価格が高めに設定されていることがほとんどです。

ただし、テレビCMには大きな問題点がありました。スポットCMにしても、タイムCMにしても、「流せる時間は限られている」ことと、「本当にリーチしたい層に届いているのかがわかりづらい」ことです。一日には24時間しかなく、一般に60分番組にCMは24回しか流れません。また、見る人によって広告を差し替えることは当然できません。

YouTubeは、このシステムをインターネットの世に転換するとき、一工夫を加えました。もともとインターネットは個人による発信が行える場所ですから、「特定のページに対して特定企業がスポンサーになる」ことは正直商売がやりづらい。連絡が付くかも分からないようなページに対してアプローチをかけ続けるのはあまりにコストがかかりすぎます。

そこで、YouTubeは「動画に広告を流すシステム」だけを開発しました。つまり、「スポットCMだけ」を採用し、個人をスポンサーしたい企業は勝手にコンタクト取ってね、という姿勢。特定個人はいないけど、とにかくYouTubeに広告を出したい企業が広告枠を買う。「広告を流すシステム」を置いてくれる投稿者には、閲覧数やクリック数に応じて対価を払う。このシステムは、テレビCMの抱えていた問題点を見事に解決して見せました。「時間の制限がないこと」と、「人によって出す広告を自動で変えられること」。簡単に説明します。

動画のアップロード者は、10分間以上のYouTube動画に対し、何回のMid-roll Ad(動画の途中で流れる広告のこと)を流すかを決めることができます。特に意味もなくダラダラ10分以上になるまで待ってる動画は99割これが目的です。やろうと思えば10分間に100回だって流して良いわけです。これに加えて、動画の最初にも広告を設置できます。さらに、動画の枠外(Web版では右下、アプリ版では概要欄の上など)にも広告を設置できます。つまり、「同時に何個も広告を流せる」状態を作り出すことに成功しました。テレビなどでは一生できない御業というわけです。

また、YouTubeには、「そのユーザがどんな動画を見ているか」によっておすすめされる動画が変わる、いわゆる「リコメンドシステム」が存在します。コレ自体は相当昔からあるシステムなので、これを広告向けに作り直すのは簡単でした。「この動画を見てる人はこういう広告が好きそう」を簡単に行えるのです。さらに言うなら、YouTubeは現在Googleサービスですから、Googleの検索履歴や、スマートフォンのロケーション履歴、音声入力の情報など様々な個人情報から「最適な広告」を選ぶことができます。興味のない広告を極限まで減らすことに成功したのです。

逆に言えば、投稿者は自分の動画にどんな広告が付くのかについて「一切」感知していません。例えば車を爆破するゲームをプレーしていても、車の広告が流れることがあります。例えば女性の人権について話している動画でも、見る人の「好み」によっては肌を晒した女性ばかり登場するゲームの広告が流れることもあります。大事なことは、「投稿主は自分の動画に付く広告を選んでいない」ということ。これだけは覚えてほしい。ポルノサイトもYouTubeに広告を出すことができますが、もし表示されたらそれはあなたのせいなのです。

インターネットが発達し、利用率が増加していくにつれ、インターネット広告技術はおぞましいほどの進歩をとげました。YouTubeもまたその1つというわけです。

 YouTube広告の「罠」

 2017年3月、世界に"Adpocalypse"という言葉が生まれました。AdvertisementとApocalypseの複合語です。広告の終末みたいな適当な訳をつけますが、なぜこのような言葉が生まれたのか。

あんまり貼りたくない(僕にもNet worthがある)んですが、この動画が始まりとされています。

youtu.be

まあ、当然よろしくないタイトルなわけですね。YouTubeの広告枠を買っていたイギリス(UK)政府、コカ・コーラ、ドクター・ペッパー、ジョンソン&ジョンソン(アメリカの医療機器メーカー)などの行政、会社、製品の広告がこの動画に乗せられたことを受けて、これらが広告枠を取り下げる対応を行いました。

これより以前にも、収益化が行われている投稿者がアップロードする動画一つ一つには"Advertiser-friendly"かどうかを判定するマーカーがついていました。収益化を行う場合、投稿者はYouTubeコミュニティガイドラインYouTube利用規約Google AdSenseプログラムポリシーなどを遵守する必要があります。これに加えて、「広告掲載に適したコンテンツのガイドライン」に則った動画を投稿することが求められています。

support.google.com

 このリンクですが、当時はこんなに充実していませんでした。2017年3月までは、言ってしまえばよほどひどい内容(人種差別、アダルトコンテンツ、自殺とか)でない限り大体は広告が表示されていました。

ちなみに投稿者からはこんなマークが見えます。

https://i.imgur.com/7IQJJZa.png

緑のアイコンは"Advertiser-friendly"、広告が表示される動画=お金を生む動画ということ。

黄色のアイコンは"NOT-Advertiser-friendly"です。これは「広告が減ったり、表示されなくなる」くらいの意味のはずだったのですが、2017年3月以降は一切広告が表示されないことが殆どになりました。黄色アイコンがつけられた動画は、画像にもありますが"Review request"が行えます。人間が実際にその動画を見ることで、本当にその動画がガイドラインに沿っていないのかをチェックしてくれます。

この下にさらに⚠マークで"Not suitable for all advertisers"があるんですが、見たことないので写真も上げられない。

先ほど「人間が実際に」と言いました。そう、この悪魔のドルマークは「勝手に」判別されます。判別される要素は、タイトル・サムネイル・内容・概要欄・タグ(実はタグがあるんですね)など多岐に渡りますが、信じられないことにそこにはコメント欄も「含まれる可能性がある」と言われています(明記はされていないが、ImAlexxが以前ツイートした内容によると「可能性はある」とされている)。そのため、投稿者は必死になって「悪い言葉」「汚い言葉」を先回りしてブロックして回っているわけです。

さらに言うなら、著作権侵害だと主張された動画はすべて収益化されません。海外だとSONYが代表格です。Sony MusicやSIEなど、様々な部分からクレームを飛ばして収益化を止めたり動画を再生できなくしたりしています。政党からの圧力で完全に削除されたチャンネルも存在します。

一番最近で言えば、ゲームミュージックを使った動画「すべて」が著作権侵害主張され、収益化が止まった事件がありました。ほぼすべてのゲーミングチャンネルが影響を受けたと思います。数日経ってガイドラインが更新され、5秒程度の短いクリップや、通りがかった車がかけていた音楽などの予期しないものに関しては、人間が確認するときにセーフになるというルールになりましたが、それでもあくまで再チェックの段階にならないと効果がありません。はっきりいうと、これはほとんど意味がない。次に説明します。

"Manually Reviewed"はなんの解決策にもなってない

人間の手でちゃんとチェックしてくれて、それで収益化できるようになるなら文句なくない?と思った方、僕もそうあってほしいと思います。これを説明するためには、YouTubeアルゴリズムと、収益化のシステムについて話さなければなりません。

収益化されているチャンネルにアップロードされた動画は、プロセス中にまず広告が乗せられる内容かどうかをチェックされます。つまり、緑なのか黄なのかがここでまず決まります。

広告の乗らない動画を上げてもお金にはならないので、ほとんどの人がまず非公開で動画をアップロードします。そこで緑か黄か見て、黄なら動画を編集し直します。

そこでやっと緑になっても、まだ安心できません。どこから著作権侵害主張が行われるか分からないですし、そもそも知らないうちに緑が黄になってるなんてこともザラにあります。

例え話をしましょう。あなたが何時間もかけて編集した動画が、やっと収益化可能になったから、アップロードしました。次の日目が覚めて動画を見たら、なんと1万再生されていましたが、動画はなぜか黄のマークがついていました。調べてみると、動画をアップロードしてから12時間ほどで黄マークがついていたようです。そこで、人間による審査をリクエストしたところ、2日後に緑に戻っていました。動画をアップロードしてから1週間後、この動画は5万再生されていたとします。この動画からいくらの収入を得られると思いますか?もし黄マークがつかずにずっと緑のままだったら、いくらになっていたと思いますか?

自分の経験から言うと、この動画から得られる収益は1000円程度だと思います。そのうち、広告費はおそらく100円程度。もう少し低いかもしれません。それくらい、最初の3日間というのは大事なんです。

YouTubeでは、ほとんどの再生数は最初の3日間で決まります。3日目までにある程度視聴数を稼がないと=収益を収めないと、YouTubeでは生きていけない。YouTubeアルゴリズムに対応するためには、以下の点だけ押さえていれば問題ありません。

できるだけ長い動画を投稿する

「釣りサムネ」を絶対に使う

 これが大事です。この2つがわかっていれば生きていけます。収益化に漕ぎ着けれるだけのコンテンツを作ってこれたなら、あとはこれを守ってください。理由は簡単です。

1. YouTubeはできるだけ長くユーザーにとどまってほしい。なぜならそれだけサイトの規模が大きくなって、より多く広告枠が売れるから。

2. YouTubeは、より長い動画を投稿する人をプロモーションしやすい。なぜなら動画が長ければ長いほどサイトにとどまってくれるユーザーが増えるから。

3. YouTubeは、広告が表示されやすい動画をプロモーションしやすい。なぜなら広告主に満足してもらう必要があるから。

4. YouTubeに動画をアップロードする人は、できるだけ多くの人に動画をクリックしてほしい。なぜなら、動画の最初には必ず広告をロードするから。

簡単ですね。これらを一番簡単に達成するには、以下の方法がおすすめです。

YouTube Liveで配信したものを、そのままYouTubeにアップロードする

 

話がそれてしまいました。とにかく、YouTubeの動画は最初の3日が命です。ゲームでも初週販売数が物を言うってよく聞くでしょう?あれと同じです。そのため、時間のかかる人間による審査は一切解決策となっていない。

この問題は、特に規模の小さいチャンネルに大きくのしかかります。たとえ収益化が行えているチャンネルでも、「チャンネル登録者が1万人未満で、過去7日間にその動画が1000回以上再生されていない」場合は人間による審査がそもそも受けられません

理由なく黄マーカーをつけられたら、その動画を諦めるしかない。そういう人たちが世にたくさんいることを知ってもらいたいです。

 

 

何が書きたいのかわからなくなってきたので、一旦ここまで。続き書くことあったら更新します。

*1:総務省公開データ「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」による http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000073.html